2006年07月09日

日本の住宅の平均寿命は・・・?

以前、住宅メーカーの広告で「アメリカは44年、イギリスは75年、日本では26年で住宅を壊している」というのを見たことがある。
おそらく、この住宅メーカーとしては自社の商品の優秀性を訴えているのだろうけれど、「だからあなたの家も、もう建て替え時期ですよ」というような建て替え層に対する心理的な誘惑も一緒に誘っていそうな気もする。

このメーカーでなくとも、「日本の住宅は短い期間で壊されている」とは良く言われることだ。
そんなこともあり、最近国土交通省が「住生活基本計画(案)」を提示し、取り壊される住宅の平均築年数を約30年から40年に引き上げる目標を打ち出した。
(新聞記事)
IMG_6630_s.JPG

だけど、本当に26年や30年で、日本の住宅は取り壊されているのだろうか?
疑問に思ったので少し調べてみた。

その結果、早稲田大学の小松幸夫教授の書かれた「住宅の寿命について」と題する資料と出会ったので少し紹介します。 

それによると、この”有名な?”26年という数値は、平成8年度の建設白書にある「過去5年間に除却されたものの平均」から引用しているらしい。

でも、この数値は平成8年以前の「5年間に壊した(除却)住宅の平均値」をまとめた数値で、まだ壊してない住宅のデーターは反映していない。
また、調査するにしても、日本の住宅の築年数についての行政機関の記録は、戦争を挟んで遡及(たどっていくこと)出来ないことも多いのだそうだ。

つまり、あまり正確ではない可能性もあることを示唆している。

また、調査時期がバブル直後の土地神話がまだ生きていた、十年以上前の時代でありちょっと古いともいえる。
この頃には地価数百、数千万円の土地に評価ゼロの古屋が建っていれば、壊して更地にし、マンションや建て売り住宅を建てて販売することが盛んに行われていた時期でもある。
私の感覚としては、現在では少し壊されるまでの期間が伸びているのではないだろうかとも思う。

そこで小松教授は、人間の平均寿命と同じ考え方で住宅の平均寿命を求められないかを研究している。

その研究の結果、日本の木造専用住宅の平均寿命は約43年となったそうだ。
私の個人的な感覚として「26年」はあまりに短いように感じていたので、「約43年」は少し納得できる数値だ。
それから考えると国交省の40年という目標値は低すぎないかとも思う・・・。

しかし、まあいずれにしろ欧米の住宅に比べれば日本の住宅は短命であることは間違いないのだろう。

日本の住宅の平均寿命が短い原因については、いろいろあるのだろうけれど工法や材料にあるのではないように思う。
木造建築は法隆寺の例を引き合いに出すこともなく、築300年、400年程度のものはいくつも残っており、住宅でも100年程度では何の問題もないと古民家を見る度に感じている。

それなのに壊され続けられているのは、おそらく戦後の所得や生活様式の急激な変化、不動産を取り巻く社会情勢の変化などに古い住宅がついて行けなかったことが大きな原因なのだろう。

だけど、いつまでもこんな「スクラップ アンド ビルド」が続くわけでもなく、資源の無駄遣いでもある。

また、住宅建築にたずさわる者としては、短命であることを前提としたような営業戦略や、「私一代保てば良い」的な、一部の住まい手の意識に迎合することなく、何がお客様や社会にとってより良いものなのか常に考えていく必要がある。

国交省のいうように、これからは住宅の寿命を延ばし「良いものを、手入れして長く使う」という考えに変化していくことだろう。


住宅は「最低限、使った木材が生育した期間以上は保たないといけない」と、良く言われる。
そうすることにより、山と街の間でつくる木材の循環が守られるという考えです。
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今取り組んでいる住宅は、高知県嶺北の山で林業家が85年間育ててきた木材を使用する。
その木に負けないよう85年以上保つ長寿命の住宅をつくり、使われ続けることができたなら、住宅のつくり手として幸せだし、お客様にとっても本当の意味で満足していただけるのではないだろうかと思う。

「住宅の寿命について」http://www.f.waseda.jp/ykom/jkf2000.pdf
早稲田大学 小松幸夫教授



posted by こまつ at 15:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 木の家
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